給気・排気・全熱交換器の違いと、店舗内装で押さえるべき考え方
換気設備は、飲食店・物販店・美容室・オフィスなど、
すべてのテナントに必須となる設備です。
しかし実務では、
- 換気とは何をする設備なのか
- 給気と排気の役割の違い
- なぜ負圧や正圧が発生するのか
- エアコンと換気の違い
といった基本が誤解されやすく、
換気計画が不適切だと次のような問題が発生します。
- 臭気トラブル
- 空調効率の著しい低下
- 逆流現象
- 強い負圧によるドア不具合・室内環境の悪化
この記事では、店舗内装で必ず理解しておくべき
換気の仕組みを基礎から誤解なく整理します。
1|給気とは何か(Fresh Air Supply)
給気とは、屋外の新鮮な空気を室内に取り込む仕組みです。
給気は大きく 自然給気 と 機械給気 に分かれます。
■ 自然給気(自然流入)
- 壁のガラリや給気口から外気が入る方式
- 風圧・温度差・気圧差によって空気が流入
特徴
- 住宅や小規模店舗で多い
- 初期コストが低い
注意点
- 給気量が安定しない
- 自ら空気を引き込む力を持たない
👉 排気が強すぎると、
給気が追いつかず負圧になりやすいのが最大の弱点です。
■ 機械給気(ファンによる強制給気)
- 送風機(ファン)で外気を室内に送り込む方式
特徴
- 商業施設・中〜大規模テナントで一般的
- 給気量が安定する
- 外気条件の影響を受けにくい
2|排気とは何か(Exhaust Air)
排気とは、室内の空気を屋外へ排出する仕組みです。
排気はほぼすべて 機械排気(ファン) で行われます。
■ 排気の種類
- 一般排気:客席、物販、事務スペース
- 局所排気:トイレ、作業室、バックヤード
- 大風量排気:厨房、工房(飲食店で多い)
⚠ 排気量が多いのに給気が不足すると、
店舗全体が負圧状態になります。
3|換気方式の違い
(第1種・第2種・第3種換気)
日本の換気方式は、給気と排気の組み合わせで次の3種類に分かれます。
■ 第1種換気(給気・排気とも機械)
- 給気・排気をともにファンで制御
- 最も安定した方式
用途
- 商業施設
- オフィス
- 大型テナント
■ 第2種換気(給気:機械/排気:自然)
- 室内を正圧に保つ方式
用途
- 病院の手術室
- クリーンルーム
👉 一般店舗で採用されることはほぼありません。
■ 第3種換気(給気:自然/排気:機械)
- 排気ファンで空気を出し、外気は自然流入
特徴
- 小〜中規模店舗で多い
- 初期コストが低い
注意点
- 給気量が不安定
- 負圧になりやすい
4|全熱交換器とは何か?
全熱交換器とは、排気の「温度」と「湿度」を給気側の空気に移し替える換気設備です。
■ 全熱交換器のメリット
- 冷暖房効率が落ちにくい
- 大量換気でも室温変化が小さい
- 省エネルギー
- 給気量が安定しやすい
■ よくある誤解
❌「換気ができるエアコン」
→ エアコンではなく換気専用設備
❌「空気を冷やしたり温めたりする機械」
→ 正しくは温湿度を回収して空調負荷を抑える装置
5|負圧・正圧とは何か?なぜ問題が起きるのか?
■ 負圧とは
排気量 > 給気量の状態で、
室内の空気圧が屋外より低くなっている状態です。
■ 正圧とは
給気量 > 排気量の状態で、
室内の空気圧が屋外より高くなっている状態です。
■ 負圧状態で起きる現象(店舗で多い)
① 臭気の逆流
- トイレ
- バックヤード
排気の弱い系統から、
空気が室内側へ引き戻される。
② 外気が隙間から侵入する
- 給気口
- ドアの隙間
- 点検口
外気が勢いよく入り、
室内環境が不安定になります。
③ 厨房の臭気・熱気が客席へ流れる(飲食店)
ダクトが繋がっていなくても、
圧力差によって空気が移動するため発生します。
④ 冷暖房効率が極端に悪くなる
外気の過剰流入により、
室温が安定しません。
⑤ 空気が入れ替わらず臭気がこもる
換気は
給気と排気がセットで成立します。
どちらかが欠けると、換気は機能しません。
6|店舗内装で換気を成立させる条件
換気を正しく機能させるためには、以下が必須です。
- 給気量と排気量のバランス
- 給気の通り道を確保する
- 排気ファン・ダクト能力が適切であること
- 全熱交換器の導入で風量を安定させる
- 空調は換気の代わりにならない
※ エアコンは外気を取り込まず、
換気設備ではありません。
まとめ
- 給気=外気を室内に取り込む仕組み
- 排気=室内空気を屋外へ排出する仕組み
- 換気方式は給排気の組み合わせで決まる
- 全熱交換器は温湿度を回収し、省エネと快適性を向上
- 負圧は「排気>給気」で発生
- 正圧は「給気>排気」で発生
- 換気は必ず給気と排気がセット
- 自然給気は風量が不安定なため注意が必要
注意書き
※本記事は一般的な考え方を整理したものです。
実際の換気設計は、建物条件・用途・設備容量・ビル規定によって異なります。
必ず、設備設計者・専門家・ビル管理者へ確認してください。

コメント