合法だが現行法には合わない建物”を正しく理解するための基礎知識
建築・内装の仕事に関わっていると必ず耳にする言葉が 「既存不適格(きぞんふてきかく)」 です。
しかし、この言葉は一般の方だけでなく、経験の浅い設計者でも誤解しやすい概念です。
まず結論から言うと――
既存不適格は「違法建築」ではありません。
本記事では、既存不適格の正しい意味、内装工事への影響、
そして 仕上げの変更(表層替え)だけの場合はどう扱われるべきか
という実務的なポイントまで分かりやすく解説します。
■ 既存不適格とは?
既存不適格とは、
建築当時の法令には適合していたが、建築基準法の改正によって現在の基準には合わなくなった建物
のことを指します。
つまり、
- 建築当時:合法 → 問題なし
- 現在:基準に合わないが、違法建築ではない
という扱いです。
耐震、防火、避難、換気、内装制限など、
建築基準法は何度も改正されているため、
築年数の古い建物ほど既存不適格の可能性が高くなります。
■ 既存不適格と違法建築の違い
| 種類 | 状態 | 発生理由 |
|---|---|---|
| 既存不適格 | 現行法には不適合だが合法扱い | 建築後の法改正 |
| 違法建築 | 法律に反している | 建築当時から申請不備・不適合 |
既存不適格は「劣っている建物」ではなく、
時代とともに基準が厳しくなった結果として生まれる“合法な状態” です。
■ なぜ既存不適格が問題になるのか?
通常の使用であれば特に問題はありませんが、
次のような工事を行う時に“現行法との整合性”を求められることがあります。
① 用途変更(物販 → 飲食、事務所 → クリニックなど)
用途が変わることで求められる安全レベルが変わるため、
排煙設備やスプリンクラーなどの追加が必要になる場合があります。
② 面積が増える(増築・区画の変更)
床面積が増えると、避難距離や設備基準が変わるため、
既存不適格部分が露呈するケースがあります。
③ 構造に関わる変更(壁撤去・大規模開口)
耐力壁の撤去などは、
既存不適格とは関係なく「構造安全上の問題」として許可されません。
■ 表層替え(仕上げ変更)の場合はどうなる?
実務で最も誤解されるポイント**
ここが非常に重要です。
内装工事では「仕上げだけを替えたい」というケースが多くあります。
例えば:
- 壁紙の張替え
- 塗装の塗り替え
- フローリング・長尺シート張替え
- 天井仕上げの更新
- 建具交換(開口寸法変更なし)
これらは 軽微な“模様替え” にあたり、自治体によっては構造・避難・防火・設備の性能に影響しない限り、
既存不適格部分を現行法に適合させる必要はないと判断される事があります。
■ ただし、表層替えでも注意が必要なケース
“仕上げだけ”と思っていても、次に該当すると現行法適合が求められる場合があります。
① 内装制限を変えてしまう場合
- 準不燃 → 可燃材に変更
- 厨房部分の不燃材を変更
→ 火災時の安全性に関わるため、消防が指摘することがあります。
② 天井仕上げの変更で区画ラインを壊す場合
- 防火区画に影響する天井
- スプリンクラーヘッドとの距離が変わる
③ 設備の移設が伴う場合
- 照明位置変更に伴う電気工事
- 空調位置変更
- ダクト干渉
微妙に「設備工事」へと踏み込むため、
模様替え扱いではなくなる可能性があります。
■ 内装工事で必要な判断ポイント
内装工事では、次の3点を必ずチェックする必要があります。
① 今回の工事が“構造・避難・防火・設備”に影響するか?
影響しない場合 → 現行法適合を求められない可能性あり
影響する場合 → 建築または消防の許可が必要
② 最終判断は建築主事・消防署による
運用の細かい判断は自治体ごとに微妙に異なるため、
必ず事前確認が重要。
■ まとめ
既存不適格とは:
“建築当時は合法だったが、法改正で今の基準に合わなくなった建物”
内装工事に与える影響は次のとおりです。
- 用途変更・増築・構造変更 → 現行法適合が必要になることが多い
- 仕上げの表層替え → 通常は現行法適合不要(ただし要確認)
つまり、
“表層替えの範囲なら問題ないことが多いが、最終判断は建築・消防が行う”
というのが実務上の正しい理解です。
■ 注意書き(ブログ用)
本記事は一般的な内容をまとめたものです。
実際の判断は建物の状況・自治体の運用・工事内容によって異なります。
必ず建築士、建築主事、消防署などの専門家への確認を行ってください。

コメント