建物の火災安全で最も重要な仕組みのひとつが 「防火区画」 です。
内装工事や設備工事では避けて通れないテーマですが、誤解や不完全施工が非常に多い領域でもあります。
まずは、防火区画の本質である 目的・成立条件・壁構造・最低限の貫通処理の考え方 を1つずつ整理します。
1|防火区画とは?(基礎の基礎)
火災時、炎と煙の広がりを一定時間防ぐための“耐火の部屋(ゾーン)”をつくる仕組み。
この「一定時間」には法令で基準が定められており、
建物の種類や規模によって 1時間・2時間 などの耐火性能が要求されます。
2|なぜ防火区画が必要なのか?
火災時に最も危険なのは 煙の急速な拡散 です。
- 避難時間を確保する
- 上階への延焼を遅らせる
- 隣室・隣区画への被害を最小限にする
これらを実現するため、建築基準法は大型商業施設や用途の重い建物に防火区画を求めています。
3|防火区画が成立するための“必須条件”
防火区画は以下の条件をすべて満たす必要があります。
① 壁・床・天井が耐火構造であること(壁構造の基本)
防火区画の壁は ただのLGS+PBでは成立しません。
一般的な実務仕様の例:
● 軽量鉄骨(LGS)+石膏ボード二重貼り(多くは2枚貼り)
- 例:LGS 0.5t以上
- PB t=12.5 × 2枚
- その間にロックウール充填(必須ではないが多く採用)
● 片面ではなく“両面”で耐火構造が必要
片面だけ二重貼りで、裏側が一重のままでは耐火区画として成立しません。
● 天井裏の壁はスラブまで立ち上げる
防火区画の壁は 必ずスラブ(床)まで立ち上がっている必要がある ため、
天井内で壁が止まっている状態は「区画未成立」。
現場で最も多いNGのひとつです。
② 開口部(扉・シャッター)が防火設備であること
代表例:
- 防火ドア
- 防火シャッター
- ドアクローザー付きの特定防火設備
開口部は その区画に求められる耐火時間と同等の性能 が求められます。
③ 設備配管・電線の“貫通部処理”が正しく施工されていること(基礎だけ触れる)
防火区画の大前提は 穴が空いていないこと です。
火災時に炎・煙は小さな隙間から一気に拡散するため、
防火区画の壁に穴があると 耐火性能がゼロに近づきます。
最低限押さえておくべきポイント:
● ダクト・配管・電線の周囲を耐火材で塞ぐ
- ロックウール+耐火パテ
- モルタル
- 耐火ボードでボックス状に包む
- 耐火スリーブ
などを使用。
● “ダメな例”の代表
- 穴をウレタンフォームで塞ぐだけ(耐火でない)
- ケーブルが追加されて穴が拡大したまま
- ダクト回りに指が入る隙間がある
これらはすべて 区画破綻 です。
※貫通処理の種類・材料・判断基準はDAY2で深掘りします。
4|防火区画で特にトラブルになりやすい場面
現場で頻出する“気づきにくい破綻例”を整理します。
(1)天井内で壁が止まっているケース
- 店舗だけ天井を貼り替えて、上部で共用部と繋がってしまう
- 既存の断熱材・軽量壁がスラブまで届いていない
非常に多い指摘ポイントです。
(2)設備更新で区画に穴をあけてしまう
- 空調スリーブ追加
- 電気配線の追加
- 防犯設備の後付け
施工者が貫通処理の重要性を理解していないと そのまま放置される ことがあります。
(3)防火扉がきちんと閉まらない
- ドアストッパーで固定
- ドアクローザーの故障
- 倉庫として物が置かれ、扉が開いたまま
これらも“区画成立していない状態”です。
5|改修工事で特に注意すべきポイント(最小限に絞った補足)
防火区画は“壊れやすい”という特徴があります。
- ちょっとした穴が命取り
- 設備工事が入ると破綻しやすい
- 間仕切り変更で区画位置がズレることもある
- 用途変更で区画性能が変わる場合がある
改修時は 「何を壊すと区画が壊れるか」を意識すること がとても重要です。
まとめ
防火区画とは、
- 火災時に炎と煙の広がりを一定時間防ぐ耐火の領域
- 壁・床・天井・開口部・貫通部のすべてがセットで成立する
- 壁の耐火構造と貫通部処理がとにかく重要
- 1つの穴・1つの開放ドアで区画は破綻する
という“建物安全の要”です。
DAY2では、防火区画の中でも現場で最も誤解・ミスが多い
「貫通部処理の実務」 を1テーマで深掘りします。
**<注意書き>
本記事の内容は一般的な基準に基づく解説であり、建物の構造・規模・地域条例により必要な仕様は異なります。実際の設計・施工・申請を行う際は、必ず消防署・建築指導課・専門家による確認が必要です。**

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